私の娘は極度の潔癖症、その娘が大学進学のために一人暮らしをすることになった。
妻、「大丈夫かしら、あの子」
私、「大丈夫だよ、もう18歳だよ」
妻、「まだ、18歳よ」
一人娘のことが心配なのは父親である私も同じ、しかし、自分の生活もあるため心配ばかりしてはいられない。
娘が一人暮らしをするために家を出る時
妻、「困ったことがあったら、電話をするのよ」
娘、「分かった」
妻、「ゴールデンウィークには帰って来るのよ」
娘、「そのつもりでいる」
私、「そのつもりじゃなくて、ゴールデンウィークには帰って来ないとダメだよ」
娘、「ゴールデンウィークなんてスグじゃない」
私、「スグでも良いから、ゴールデンウィークには帰って来るんだよ」
娘、「分かった」
娘の引っ越しに、妻も付いて行った。
それから1週間後
妻、「ただいま」
私、「おかえり」
妻、「私、ひとりよ」
私、「・・・」
妻、「マンションの大家さんには、きちんと挨拶をしてきたから」
私、「大家さんはどんな人だった?」
妻、「感じの良い人だったわ」
私、「大家さんは女、それとも男?」
妻、「貴方より、ずいぶん年上のお爺さん」
私、「大家さんは男か・・・」
一人娘が離れて暮らしていると思うと、寂しくて不眠症になってしまった。
不眠症になった私が夜遅くまで起きていると、娘から電話があった。
娘、「パパ、大変」
私、「どうしたの?」
娘、「早く来て」
行ってやりたいのだけど、不眠症の私は酒を飲んでいたため、スグには行けない。
私、「どうかしたの?」
娘、「トイレが流れないの」
トイレの水が流れないのは、女の子にとっては一大事。
夜中に連絡が付くのは、娘が住んでいるマンションの管理会社、しかし、誰も出ない、何だよ!娘の一大事に!
マンションの大家さんに連絡をすると、「スグ見に行く」と言ってもらえ、とりあえず安堵。
娘からは大家さんが来てくれたと報告はあったのだが、そのあと、私のもとに大家さんから電話があった。
私、「お世話になりました」
大家さん、「お世話どころじゃないよ」
私、「どうかしましたか?」
大家さん、「トイレに何が詰まっていたと思う?」
私、「生理用品でしょうか?」
大家さん、「生理用品を詰まらせる人は多いけど、貴方の娘さんは野菜をトイレに詰まらせたんだよ」
私、「どうしてトイレに野菜が詰まるんですか?」
大家さん、「そんなの自分で聞いてよ」
私、「すいません」
大家さんの電話を切ってから娘と話すと、潔癖症の娘は調理で余った野菜クズが冷蔵庫にあるのが嫌らしく、トイレに流していたことが判明。
仕事を休んで大家さんに謝りに行くと、誠意が伝わり許してくれた。
娘が住んでいるマンションの間取りは1K、叱るつもりで来たのだが、狭い部屋で娘と2人きりで寝ると叱れなかった。
私、「ゴールデンウィークには帰って来るんだよ」
娘、「そのつもり」
娘が、どのつもりでいようが、ゴールデンウィークには私が迎えに行く。